茶入のフタ

お参りに来られたS様から、飾ってある茶道具について質問を頂きました。

「このフタは、なんでヨゴレてんのですか」と・・・。

これは「茶入(ちゃいれ)」という道具です。

茶入はお抹茶の粉を入れておくもので、象牙で出来たフタをつけるというのが一応の決まりです。

 

で。

このフタについてる、黒いヨゴレ。

これは「す」とか「虫食い」と呼ばれるものです。

本当に虫が食べたものではなく、象牙の神経にあたる心材の部分。


象牙がそもそも貴重品ですが、その中心部分となれば更に貴重品。

「キレイでカンペキなフタもいいけど、一見ダメに思える虫食いのフタもまた美しい!」

・・・といった具合で、貴重品の中の貴重品というプレミアム感+不完全の美を尊ぶ昔人の美意識がマッチして採用されたそうで。

 

試しに、たろぼーにある色々な茶入のフタを集めてみました。

大きさはもちろんですが、姿や形、色合いも様々です。

奥の5つは「す」なし。

前の5つは「す」ありです。

ちなみに、前列右端のものは人工的に「す」が入れられたもの。

天然物の「す」は貴重品。中々手に入らないので、加工して「す」っぽくするわけですね。

 

更に言うと、象牙フタも「合材物」「貼物」「一枚物」があります。


「合材物」は、見える部分は象牙、見えない部分は木材というもの。

茶入フタの裏には金箔紙(一部銀箔もある)を貼る決まりですので、木材を合わせてても「分からない」のです。

 

「一枚物」は、文字通り一枚の象牙で出来たフタ。

↓見本。金箔紙をはがしても、ぜんぶ象牙です。

なお「貼物」も、ぜんぶ象牙という点では同じですが、何枚かの薄い象牙が貼り合わされています。

 

一枚物と合材物の見分け方は簡単。

高輝度ライトをフタに当て、光が透ければ一枚物。

光が透けず、真ん中に影ができれば合材物です。だいたい。

 

近年は希少動物保護のため、象牙を似せた「ラクトフタ」や「樹脂フタ」も開発されています。

 

では、また。

2020年02月24日